平成13年の建築基準法改正により、木造による高さ制限、延べ床面積制限が撤廃され、木造による大規模建築物が可能となりました。

その後法整備が進み、実大実験による構造性能の検証などが行われながら、技術開発が進んでいますが、木質構造による大規模建築物は、まだまだ普及しているとは言えない状況にあります。

そのような状況の中、現在木造軸組構法による6階建て複合ビルの工事が進んでいます。

この建物は、「平成28年度 「サステナブル建築物等先導事業」に採択されています。

サステナブル建築物等先導事業(木造先導型) 平成28年度事業報告

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設計趣旨、計画概要を以下にまとめました。
 
 
 
■設計趣旨

本計画は、RC造4階建て事務所ビルの建て替え計画です。
主構造を木造とし、新築建物重量を既存建物重量以下になるように設計することで、既存の場所打ちコンクリート杭を利用出来るのではないかと考えました。

新築建物は、主構造(3〜6階)を木造軸組構法、地下1階をRC造、ロングスパンの求められる地上1~2階事務所を鉄骨造とし、軽量な外装材の選定、階高を抑えた断面計画などにより、建物を軽量化しています。

これにより、新築建物は既存(496㎡)に対して、約1.4倍(705㎡)の床面積を確保していますが、建物重量は42t削減することが出来ました。

既存建物の解体後、既存杭の調査を行い、全9本の健全性が確認出来たため、予定通り既存杭の上に新築建物を建設しています。

都市における木造の積極的な採用、建物軽量化による既存杭の利用といった取り組みが、同規模ビルの建て替えにおけるモデルケースとなってゆくことを期待しています。

 
 
 
■既存杭の利用

新築建物重量を既存建物重量以下に設計し、既存の場所打ちコンクリート杭を利用します。
(既存建物:昭和61年竣工、検査済証交付済)
 

 
 
 
■配置計画

敷地はJR蒲田駅と京浜急行蒲田駅の中間ほどに位置あり、賃貸の需要が見込めるエリアです。

敷地北側が幅員7mの道路、他三方は隣地となっており、隣家は東側がRC5階建て、その他は木造2階建てとなっています。

日影規制対象、第三種高度地区であることから建物を南側に配置し、東側外壁を傾斜させることで、高さ制限をクリアしています。

道路高さ制限については、天空率を適用して、最大限の容積を確保しました。

敷地北側は2台分の駐車場を確保しています。
 

 
 
 
■平面計画

設計条件は、地下1階及び1〜2階を事務所、3〜6階を共同住宅とするものでした。

ロングスパンの求められる事務所は鉄骨造とし、間仕切りなど、比較的壁の入れられる共同住宅は木造軸組工法を採用しています。

木造部分は1時間耐火が求められますが、北側開口部前の構造体は長期荷重を負担させない設計とし、間柱及び筋交いを現しとしています。
 

 
 
 
■断面計画

建物を軽量化するため、木造部分最大4.7mスパンに対し梁成を270mmに抑え、二重床のふところを最小限として、階高を3mに、床厚を700mmに抑えています。

外装材は屋根・外壁共にガルバリウム鋼板とし、軽量化を図っています。
 

 
 
 
■立面計画

計画建物は耐火建築物です。
(地上1〜2階:2時間耐火、3〜6階:1時間耐火)

北側(道路側)外観は桧板を貼り(日本木造住宅産業協会、耐火個別認定)、見た目にも温かみのある外観としています。

木造部分3〜6階は1時間耐火が求められますが、北側開口部の筋交い及び間柱は、長期荷重を負担させない設計とし、構造体を現しとしています。

 
 
 
■既存場所打ち杭の調査

既存建物解体後、以下の調査を行い、全9本が再利用可能であることを確認しました。
(1)健全性調査
①杭頭目視調査:杭径、主筋本数、かぶり厚さ測定、杭頭鉄筋の腐植度確認
②インテグリティ試験(IT試験):杭長、杭体の連続性、欠損等の有無を調査

(2)耐久性調査
①圧縮強度試験:杭のコンクリート強度確認
②中性化試験:杭コンクリート中性化深さの確認
③杭主筋鋼材試験:杭主筋引張強度の確認

IT試験 模式的な測定波形

IT試験作業状況①

IT試験作業状況②
 
※IT試験とは上図の様、杭頭にハンマー等で軽打することにより発生した弾性波から、杭断面内に異常がないかを確認する試験です

 
 
 
■構造設計の概要

1階から2階は鉄骨造、3階から6階は耐火木構造の6階建てビルを実現します。
既存杭を利用した設計を行います。


 
 
 
「コンクリート+鉄骨+木」による多様な素材の設計を各階の耐火仕様を満たすことで、実現しています。


 
 
 
木造ブレース接合部の施工簡略化のために、長期ではブレースを除外して解析を行い、地震時の応力だけを負担する解析を行っています。

 
 
 
■計画概要

工事名称:(仮称)東京発条製作所本社ビル新築工事
事業主体名:株式会社アライホールディング
主要用途:事務所+共同住宅
建設地:東京都大田区蒲田
工事予定期間:2017年12月〜2018年9月
主構造形式:地下1階:RC造、地上1〜2階S造、地上3〜6階:木造軸組構法

主要仕上材料
外部
屋根:ガルバリウム鋼板 t=0.4 横葺き
外壁:ガルバリウム鋼板 t=0.4 横葺き、桧 t=15 防腐剤塗布
軒裏:桧 t=15 防腐剤塗布、ケイ酸カルシウム板 t=8 VP

内部
天井:デッキプレート塗装、不燃木材 t=15、EP
壁:塗装、不燃木材 t=15、EP
床:フローリング、タイル

最高高さ:19.539m
建築面積:126.00㎡
延床面積:705.46㎡

 
 
 
■工事写真